Vol. 6 ツノヤセバチ科 Stephanidae
今回はツノヤセバチ科を扱います。日本産種に関する同定の資料は無く、そのことが本科の研究推進を妨げていると判断し、下記に簡潔な同定資料を作成しました。この資料はわが国における本科の研究推進へ役に立つかと考え、不十分な点もあるかもしれませんが、公表することにしました。
私は以下の種を確認しています(詳細は寄生蜂のリストを参照ください)
- 本土から確認している種はほぼニッポンツノヤセバチParastephanellus matsumotoi Achterberg, 2006である。他に1個体、本種の原記載に一致しない(後体節第1背板が異様に短い)種を確認しているが、変異か別種かの判断は追加個体の確認なしには断定できない。ここではParastephanellus sp. Aとしておく。
- 南西諸島からは既知のリュウキュウツノヤセバチ(=ケツノヤセバチ)Foenatopus cinctus (Matsumura, 1912) とParastephanellus sp. B、Megischus baogong Ge & Tan, 2022を確認している。
- 小笠原諸島からは文献記録のFoenatopus cervinus Townes, 1958のほかに、オガサワラツノヤセバチStephanus anijimensis Watanabe & van Achterberg, 2014 を確認している。
属の同定は下記検索表で行なえます。形態用語等はvan Achterberg (2002)に従いました。
日本産の属への検索表
(van Achterberg, 2002に基づき、一部改変)
1.前翅翅脈1-SR+Mは存在する。前翅翅脈2-1Aは広く存在し、直線状。後脚脛節は後脚腿節よりも明らかに長い。ほおは通常広く暗色で、しばしば腹方が狭く明るい黄色となる。日本から確認している種はいずれも産卵鞘の先端に白いバンドをもつ。
・・・2へ
-.前翅翅脈1-SR+Mは存在するか、しばしば欠く。前翅翅脈2-1Aは広く欠き、部分的に存在する場合はカーブする。後脚脛節は後脚腿節よりもわずかに長い。ほおはしばしば複眼後方で広く明るい黄色となる。産卵鞘の先端はしばしば白いバンドを欠く。
・・・3へ
2.メスの後脚付節は5節からなる。後脚腿節は腹面に3つの大きな歯をもつ。後体節第1背板は短く、長さは幅のせいぜい5倍程度(中国には長い種がいる)。
・・・Stephanus Jurine, 1801
-.メスの後脚付節は3節からなる。後脚腿節は腹面に2つの大きな歯をもつ。後体節第1背板は細長く、大抵長さは幅の5倍以上。
・・・Megischus Brullé, 1846
3.前翅は2-SR脈と1-SR+M脈を欠く。頸部は適度~非常にスレンダーで、細かく皺づけされ、前胸背板中央背方部には明瞭なひだ状(あるいはとさか状)の高台を持たず、特殊化しない。後脚脛節外端は後方で大抵細かな斜めの皺を欠き/或いは腹方に細かな隆起線を持つ。前翅翅脈2-CU1はほぼ常に減少するか、しばしば完全。後胸側板はスレンダー。少なくとも日本産既知種は産卵鞘の先端に白いバンドをもつ。
・・・Foenatopus Smith, 1860
-. 前翅の2-SR脈は存在し(しばしば染色されるのみ)、1-SR+M脈 を有する。頸部は少なくとも適度に頑丈で、前胸背板中央背方部には弱いひだ状(あるいはとさか状)の高台を持つ。後脚脛節外端は腹方に明瞭な斜めの皺を持 ち、よく幾つかの皺を伴い、そして/或いは先端半分は腹方に多少とも発達した隆起線を持ち、めったに皺や腹方隆起線を欠くことは無い。前翅翅脈2-CU1は完全。後胸側板は頑丈。 少なくとも日本産既知種は産卵鞘の先端に白いバンドを欠く。
・・・Parastephanellus Enderlein, 1906
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