シリアゲコバチ科 Leucospidae Walker, 1834
主な特徴
① 産卵管は後体節の背方に伸張し、中体節の方向に伸びる。
② 後体節第2背板は第1背板の下に隠れ、完全に見えないか、殆ど見えない。
③ オスの後体節第2~6背板は互いにほぼ融合する。
④ 後脚腿節は幅が拡大し、腹面に歯を持つ。
初めて観察した誰もが驚愕する極めて特異的な形質を有するコバチの一群で、同定が難しいコバチの仲間にありながら識別は極めて容易。アナバチやハナバチに寄生する為、それらの巣の周り(関東地方だと木造建築物の周りなど)で見られることが多い。世界からはおよそ110種が知られており、日本からは近年になって、Nagase (2007)によって記載されたベニシリアゲコバチを含め、4種が記録されている。
本土では4種の内、シリアゲコバチとオキナワシリアゲコバチの2種が知られ、下記の検索表で容易に識別できる(上の写真も参照)。
本土産2種の検索表
(Habu, 1962を基に一部改変)
1.産卵管は長く、胸部に達する。前胸背板は狭く黄褐色帯を持つ(前方の帯は欠く)。メスの前伸腹節は明瞭に後胸側板の隆起部より短く、その後縁は湾入し、中央の隆起線はほとんど無く、色彩は黒色。後脚腿節腹面は11-14歯を有する。後脚脛節の先端は腹方先端にあまり伸張しない。
・・・・シリアゲコバチLeucospis japonica Walker, 1871
-.産卵管は短く、腹部長の半分程度。前胸背板は明瞭に黄褐色(もしくは赤褐色)の帯を持つ。前伸腹節は短くならず、明瞭に後胸側板の隆起部より長く、その後縁は湾入せず、中央の隆起線は明瞭、色彩は黒色で、中央に黄色部を持つ。後脚腿節腹面は8-9歯を有する。後脚脛節の先端は腹方先端に強く伸張する。
・・・・チュウゴクシリアゲコバチLeucospis sinensis Walker, 1860
日本産既知種のリスト
Leucospis Fabricius, 1775
japonica Walker, 1871 シリアゲコバチ
sinensis Walker, 1860 チュウゴクシリアゲコバチ(=オキナワシリアゲコバチ)
okinawensis Matsumura, 1912
nambui Habu, 1977 ヒメシリアゲコバチ
pulcherrima Nagase, 2007 ベニシリアゲコバチ
日本産種に関する主な文献
(括弧の日本語タイトルは判りやすいように渡辺がつけたもの)
Habu, A. (1962) Chalcididae, Leucospididae and Podagrionidae (Insecta: Hymenoptera). Fauna Japonica: 165-177.(アシブトコバチ科、シリアゲコバチ科およびオナガアシブトコバチ科(のモノグラフ))
Habu, A. (1977) A new Leucospis species from the Ryukyus, Japan (Hymenoptera, Leucospididae). The Entomological Review of Japan, 30(1/2): 47-51.(琉球からのLeucospis属の1新種について)
Nagase, H. (2007) Description of a New Species of Leucospis (Insecta, Hymenoptera, Leucospidae) from the Ogasawara Islands, Japan. Bulletin of the National Science Museum Series A, 33(1):41-44.(小笠原諸島産シリアゲコバチの1新種の記載)