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マイマイガに寄生したサムライコマユバチの繭に寄生するアシブトコバチ
マイマイガに寄生したサムライコマユバチの繭に寄生するアシブトコバチ

寄生蜂(きせいほう または きせいばち)とは、捕食寄生や労働寄生、社会寄生を行なうハチのことです。

 

この寄生蜂の大多数を占めるのが捕食寄生蜂の仲間(Parasitoid wasp)です。彼らはまさしく自然界の「エイリアン」であり、幼虫は卵を産み付けた相手(寄主:おもに昆虫やクモなど)を食べて育ち、最終的には殺してしまいます。このウェブサイトで主に扱う寄生蜂は彼らになります。

 

寄生蜂(あるいは捕食寄生蜂)と一口にいっても、その領域は極めて広く、とても一人で網羅できません。そこで、このウェブサイトを運営する私たちは特に有錐類(ゆうすいるい)の捕食寄生蜂にウエイトをおいて研究をしています。

 

捕食寄生蜂はとても身近な昆虫で、1ミリに満たない微小な種から10センチを超える大きな種まで、さまざまな種類がいます。コバチやクロバチの仲間のよう に、小型で目立たない仲間だけでなく、ヒメバチやコマユバチのような比較的大きな仲間でさえ、人家の庭や公園でも新種が見つかります。これは昆虫の中でもきわめて大きな多様性をもつグループであることと、あらゆる研究が遅れていることが原因です。皆さんも近所の公園で蚊のような虫が飛んでいたら注意して見てみてください、せわしなく動き回る彼らに出会えるはずです(ハエやカは翅が見かけ上2枚、ハチの仲間は4枚あります)。

 

捕食寄生蜂はその「寄生」にまつわる生態や形の多様性など、様々な面白さをもつ他に、ひとつ人間の活動にとって重要な面を持ちます。それは、自然界で他の生物の個体数を制御する生き物であるということです。私たちの食糧を生み出す畑や田んぼ、果樹園に発生する害虫の中には、寄生蜂のおかげで被害が軽減している種も多々あります。また、森林などの景観も、害虫の大発生を抑制する寄生蜂の力に支えられています。寄生蜂のもつこのような機能を「生態系サービス」といい、最近多くの人々に注目されています。寄生蜂のもつ生態系サービスを明らかにすることは、昆虫学の範囲に留まらず、広く社会の役に立つ可能性を秘めています。

 

さきほど私は寄生蜂には新種がたくさんいることや、研究が遅れていると書きましたが、これはつまり基本的なことを調べることでさえ、難しいということを意味します。たとえばそのハチがどのハチ仲間なのか?どんな種名なのか?どこに分布しているのか?どんな生き物に寄生するのか?・・・多くの昆虫ではそれなりに簡単に調べることができることも、捕食寄生蜂の世界では簡単にはわかりません(たいてい英語の文献などを調べる必要があります)。そのため、これらの未解明のことを調べ、明らかにすべく、日夜研究者が研究に取り組んでいるのです。

 

しかしながら、いつまでも研究者にしか調べられないままではいけませんし、研究者だけで解明できるほど、単純な世界ではありません。ですので、私たちができる範囲で、情報を発信してゆくことにしました。このウェブサイトをご覧になる皆様は、寄生蜂の世界には未知なことやわからないこと、調べるのが難しいことがあることを念頭におきつつ、このウェブサイトをご利用いただけましたら幸いです。

 

寄生蜂の魅力・面白さが一人でも多くの方に伝わることを願って、寄生蜂の情報発信の駅として、このサイトが少しでも役に立つことを願っています。

(管理人を代表して 渡辺 恭平)

 

(追記)ちなみに、労働寄生蜂は、他のハチが蓄えた餌を横取りする賢いハチです。社会寄生蜂もまた、労働寄生のように対象から搾取をしますが、対象を労働力として利用する蜂た ちです。彼らについては日本語の書籍もありますので、ぜひ調べてみてください。

どのようなときに、どこを見ればよいか

日本にいる寄生蜂の写真やリスト、説明 → こちら

(色とりどりで、様々な形のハチがいます)

 

標本の作り方や専門用語の解説 → こちら

 

サイトの作成者は誰?何している人? → こちら

コアシナガバチを狙うアシナガバチヤドリトガリヒメバチ。相手はあのアシナガバチ、どうやって寄生するのだろうか?
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