Vol. 5 No. 1 メンガタヒメバチ亜科Metopius

Genus Metopius, Subfamily Metopiinae (Family Ichneumonidae)

2020年5月29日更新 渡辺恭平

 

 亜科の解説と属および亜属への検索表は、寄生蜂のリストと渡辺(2013)参照ください。

 

 Metopiusは、顔面に盾状の隆起があるきわめて特徴的なヒメバチで、慣れれば他のヒメバチから瞬時に識別することができます。多くの種は夜間灯火に飛来するので、夏場に山間の街灯などでよく見られます。

 本属はよく見られる種とあまり見られない種の格差が激しく、沢山採れても全て同じ種ということもしばしばあります。

 

 関東地方では、キオビメンガタヒメバチ(草地性)、ムラサキメンガタヒメバチ(森林性、灯火に飛来)、キュウシュウメンガタヒメバチ(森林性、灯火に飛来)が得られる種の殆どを占めており、稀にアラカワメンガタヒメバチなどが得られます。

 

 現在では、亜属Tylopiusは亜属Peltastesのシノニムになっている。

日本産Metopius種への検索表

(Kusigemati, 1971に基づき、一部改変)

 

1.触角挿入孔間は側方から圧された隆起線を持つ(図A、C)。大腮の下の歯は欠く(図A)。体はしばしば赤みを持ち、明瞭な黄帯をもつ (Subgenus Metopius)

・・・キオビメンガタヒメバチ M. (M.) browni Ashmead, 1905

(旧和名キオビコシブトヒメバチ)

-.触角挿入孔間の隆起線はそれほど圧されず、隆起線の幅は広い(図B、D、E)。大腮の歯は下の歯を持つ(図B、ただし、大腮を開かないと判りにくい)。

・・・2へ

2.額は触角挿入孔間から上方にかけてひだを持ち、挿入孔での隆起の中断は無い(図E)(Subgenus Peltastes)

 ・・・3へ

-.額は独立の角や瘤を持つか、あるいは隆起によってそれが挿入孔上方につながる。挿入孔間で隆起が中断する(図B、D)(Subgenus Ceratopius)。

・・・7へ

3.顔面の盾状隆起の高さは幅の8/9で幅広い。下縁は丸い。前伸腹節の下半分はしわに覆われる。後脚腿節はスレンダーで側方から見て長さは幅の3.3倍。

・・・モモボソメンガタヒメバチM. (P.) fossulatus Uchida, 1933

-.顔面の盾状隆起の高さは幅の1.1倍でより狭い。下縁は様々。前胸背板は斜めの皺を持つ。後脚腿節は頑丈で側方から見て長さは幅の2.52.9倍。

・・・4へ

4.中盾板のNotaulusは強く。中盾板の後方に達する。小盾板はとても強い縦皺を有する。後体節第23背板は強く網状に皺づけされる。後体節第15背板は一様に黒色。顔面の盾状隆起部は一様に黄色で、下縁は幾分切り詰められる。前翅長18mm

・・・イヨメンガタヒメバチM. (P.) iyoensis Uchida, 1930

-.中盾板のNotaulusは不明瞭。小盾板は幾分細かく、密に点刻される。後体節第2、3背板は強く点刻される。後体節第1第5背板は黄色部を持つ。

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5.前伸腹節は隆起線Costulaを欠く。鏡胞は五角形。小盾板は黒色。後腿節は基部方半分が黄色、先端方が黒色。

・・・サッポロメンガタヒメバチM. (P.) sapporensis Uchida, 1930

-.前伸腹節は隆起線Costulaを多少とも有する。鏡胞はひし形で、柄を持つこともある。小盾板は先端方が黄色。後腿節は黒色で、先端は黄色。

・・・6へ

6.後体節第35背板の各節の長さは先端幅の2/35/7。盾状隆起は一様にオスで黄色。メスでは黒地に黄色紋。前胸背、後胸側板、前伸腹節はオスで黄色紋を有する。オスの上唇は黄色、メスは黒色。後体節第5背板は先端に黄色部を持つ。

・・・チョウセンメンガタヒメバチM. (P.) coreanus Uchida, 1930

-.後体節第35背板の各節の長さは先端幅とほぼ同長。盾状隆起は雌雄とも黒色で、側縁と背縁が黄色。上唇は黒色。

・・・アラカワメンガタヒメバチ M. (P.) arakawai Uchida, 1930

7.前翅翅脈2m-cuは鏡胞の中央付近で生じる。前伸腹節の小室は中央に鋭い縦隆起を持つ。中側板は前縁付近に黄色紋を持つ。後脚腿節は多少とも黄色部を持つ。

・・・ハキメンガタヒメバチ M. (C.) hakiensis Matsumura, 1912

-.前翅翅脈2m-cuは鏡胞の中央より先端で生じる。前伸腹節の小室は中央縦隆起を欠く。中側板は黄色紋を欠く。

・・・8へ

8.鏡胞は五角形か半ばひし型。マーラースペースと上唇は黄白色。後体節背板は強くメタリックブルー。

・・・マルヤマメンガタヒメバチ M. (C.) maruyamensis Uchida, 1930

-.鏡胞はひし形。マーラースペースと上唇は黒色。後体節背板は適度なメタリックブルーもしくは黒色。

・・・9へ

9.盾状隆起は下方でするどく尖る。小盾板は黒色で側方隆起は先端方に多少とも伸長する。後脚腿節は黒褐色~黒色。前翅は弱く曇る。

・・・ムラサキメンガタヒメバチ M. (C.) dissectorius (Panzer, 1805)

-.盾状隆起は下方で広く丸い。小盾板は一様に黒色で側方隆起は伸長しない。後脚腿節は赤褐色。前翅は強く曇る。

・・・キュウシュウメンガタヒメバチ M. (C.) kiushiuensis Uchida, 1932

図:各種の頭部―A, C, キオビメンガタヒメバチ Metopius (Metopius) browni; B, ムラサキメンガタヒメバチ M. (Ceratopius) dissectorius; D, キュウシュウメンガタヒメバチ M. (C.) kiushiuensis; E, M. (Peltastes) fossulatus
図:各種の頭部―A, C, キオビメンガタヒメバチ Metopius (Metopius) browni; B, ムラサキメンガタヒメバチ M. (Ceratopius) dissectorius; D, キュウシュウメンガタヒメバチ M. (C.) kiushiuensis; E, M. (Peltastes) fossulatus

同定のための文献

渡辺恭平(2013)日本産メンガタヒメバチ亜科(ヒメバチ科)に関する覚書Ⅰ:日本産の属への検索表とAcerataspis, Drepanoctonus, Metopius, Periope, Pseudometopiusの各属,和名の見直し.神奈川虫報 (181): 15-31.