Vol. 4 ヒメバチ科ホソナガヒメバチ亜科
Subfamily Diacritinae (Family Ichneumonidae)
亜科の説明は寄生蜂のリストを参照ください。
旧北区に分布する属への検索表
1.中胸盾板は適度に密集した点刻を持つ。後体節第1節は横から見て直線。大腮の上の歯は下の歯より少し短い。国内から知られる種の背板は黒色。
・・・Ortholaba Townes, 1969
‐.中胸盾板はとてもまばらな点刻を持つ(ほとんど無点刻)。後体節第1節は横から見て弱く曲がる。大腮の上の歯は下の歯とほぼ同じ長さ。後体節背板は各節先端に白帯をもつ。
・・・Diacritus Förster, 1869
日本産のホソナガヒメバチ亜科は上記2属に含まれる3種が知られており、私も今のところこれら3種のみを確認しています。
タウンズホソナガヒメバチは一見するとヒラタヒメバチ亜科Ephialtini族やウスマルヒメバチ亜科Lissonota属の種に似ていますが、下記の写真、特に後体節第1節の形状をしっかり確認すれば誤同定することはありません。しかしながら、♂の一部個体は前胸背板前縁と中胸側板下方が黄白色を帯びる変異(?)があり、この点に関しては今後標本を集めて確認する必要があります(今のところ私は変異として扱っています)。
一方、Diacritus属の2種は互いに似通っており、識別は若干難しいです。Momoi (1966)の原記載および検索表については、タイプ標本および私が所有する標本を調べたところ、以下の事が明らかとなっております。以下にコメントを足します。
1) 前胸背板前縁の黄白色紋は、一般にモモイホソナガD. incompetusの方が大きいが、個体サイズによって面積に大きな変異が生じる。後体節背板においてもその傾向は認められる。
2) 前胸背板、中胸側板、後胸側板、後体節第1、2背板の表面彫刻は、両種とも個体サイズが小さいほど強くなる傾向が認められた。
3) 後体節第1、2背板の縦皺は検索表において種の識別点に挙げられているが、これは当てはまらず、強弱の傾向程度しか利用できない。
4) ニッポンホソナガD. aciculatus japonicusとモモイホソナガD. imcompetusの採集地を比較すると、後者のほうがより高標高もしくは寒冷な環境で得られているようである。
日本産種は下記の検索表と写真を併用すれば同定できると思われます。
日本産Diacritus属の種への検索表
1.後頭隆起線下方終点は大腮基部に近い位置で下口隆起線に一見したところ殆どつながる(わずかに合流部は後頭隆起線が不明瞭になる)。隆起線の合流部付近は著しく窪むが、隆起縁は持たない(図1)。後体節第1、2背板は次種よりも強く縦皺を伴う。♂の顔面は広く黄白色部を持つ(ただし本亜種の♂は未記載)。
・・・ニホンホソナガヒメバチDiacritus aciculatus japonicus Momoi, 1966 ♀♂
-.後頭隆起線下方終点は大腮基部にある程度近づくが、下口隆起線につながらず、下方終点は広く消失する。後頭隆起線下方終点付近は著しく窪み、窪みの前縁が後頭隆起線下方部に沿って走る(図1)。後体節第1、2背板は特に小型個体において縦皺を伴うが、一般に前種よりも弱く、特に第1背板においてその傾向は顕著。前胸背板前縁と後体節の黄白色部は前種よりもより広い。♂の顔面は触角挿入孔下部に一対の黄白色紋を持つ他は広く黒色。
・・・モモイホソナガヒメバチDiacritus incompetus Momoi, 1966 ♀♂
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