研究していること


ヒメバチ科を中心とする寄生蜂の仲間の分類学的研究



 ヒメバチ科を中心とする主に中型~大型な寄生蜂の仲間の分類学的な研究を行っています.特にヒメバチ科,中でもアメバチ亜科,コンボウアメバチ亜科を中心に研究を行っています.

 

アメバチ亜科の分類学的研究

 

 アメバチ亜科は32属1100種以上の種を含むヒメバチ科の代表的な一群です(Yu et al., 2012; Lima et al., 2013; Alvarado, 2014; Rousse & Noort, 2014; Schwarzfeld & Sperling, 2014).この亜科は,①極地を除く全世界に分布し,②主に中型から大型の鱗翅目幼虫などに飼い殺し型単寄生をし,③多くの夜行性のグループを含むことが知られています(Gauld & Mitchell, 1981; Yu et al., 2012).ヒメバチ上科に含まれる夜行性のハチは,分類群に関係なくアメ色の体に長い触角を持つなど似通った形態を有しており,“ophionoid facies”と呼ばれています(Townes, 1971; Gauld & Mitchell, 1981; Short et al., 2006; Quicke, 2015).“ophionoid facies”の昆虫は分類群ごとの形態差が軽微であり,一般に分類が難しい分類群が多く含まれており,これはアメバチ亜科も例外ではありません.

 国内からは現在,7属52種のアメバチ亜科が知られています.しかし,依然として属レベルで日本未記録なものや,国内から知られている種数と同数以上にも及ぶ不明種の存在を私は確認しており,その多様性の解明度は依然として低いままです.私はこのようなアメバチ亜科の多様性の解明のため,分類学的研究を行っています.

 

 

① アメバチ亜科ウスモンアメバチ属の日本からの初記録と2新種記載

 

 従来,アメバチ亜科ウスモンアメバチ属は日本からは記録されておらず,オーストラリア区,オセアニア区,東洋区から30種が知られていました.しかし,私たちが茨城県つくば市にある農業環境技術研究所に収蔵されているアメバチ亜科の標本を調査した結果,奄美大島と屋久島から得られたウスモンアメバチ属の標本を発見しました.

 私たちはそれらの標本を分類学的に検討し,それらが未記載種(新種)であることを確認しました.そこで,Zootaxaという分類学に関する国際誌で日本からウスモンアメバチ属を初記録すると共に,オオウスモンアメバチとヒメウスモンアメバチの2種を新種として記載しました.

 

論文So Shimizu & Kyohei Watanabe (2015) Discovery of the genus Leptophion Cameron, 1901, from Japan and the Palaearctic region, with description of two new species (Hymenoptera: Ichneumonidae: Ophioninae). Zootaxa, 4000: 111–122.

http://dx.doi.org/10.11646/zootaxa.4000.1.5

 

  ↑ 新種として記載したヒメウスモンアメバチ

 

 

コンボウアメバチ亜科の分類学的研究

 

 コンボウアメバチ亜科は46属700種以上の種を含むヒメバチ科の代表的な一群です(Yu et al., 2012; Shimizu, 2016a, b).この亜科は,①極地を除く全世界に分布し,②鱗翅目幼虫の飼い殺し型単寄生,または鞘翅目幼虫の飼い殺し型単寄生をすることが知られています(Yu et al., 2012).日本にも非常に多くの種が分布しています.しかし詳細な生態などが不明であるため,草地性の一部の種を除くと偶産的な種が非常に多く含まれています.したがって日本産のヒメバチ科の中でも分類学的整理が遅れている分類群の一つと言えます.また,形態的に幅広い変異を有するため,分類が難しい分類群でもあります.

 国内からは現在,10属64種が知られています.しかし,依然として属レベルで日本未記録なものや,国内から知られている種数と同数以上にも及ぶ不明種の存在を私は確認しており,その多様性の解明度は依然として低いままです.私はこのようなコンボウアメバチ亜科の多様性の解明のため,分類学的研究を行っています.

 


各地での寄生蜂のファウナ調査



  国内各地の寄生蜂ファウナの解明を目的とし,調査を行っています.現在は,山形県,新潟県,栃木県,茨城県,長野県でマレーゼトラップを設置し,調査を行っています.

 

新潟県の寄生蜂相

 

 新潟県の寄生蜂相の調査を行っています.新潟県では非常に豊かな環境を有することから,様々な分類群の昆虫の調査が行われてきました.しかし,寄生蜂に関しては他の分類群の昆虫と比較すると解明度が著しく低い状態でした.

 そこで私は新潟県の主に中越地方と上越地方において寄生蜂を採集・同定すると共に,文献調査によって県から既に記録のある種をリストアップし,新潟県産のヒメバチ科目録を作成しました.また,現在はコマユバチ科,ヤセバチ上科の目録も作成しています.

 今後は下越地方や沿岸地域,粟島,佐渡島など,まだ調査を行っていない地域での調査を行い更に新潟県における寄生蜂の多様性を解明していきたいと考えています.